※死にネタ別れネタ有。
ちょこっとじいさんカカイルも出てきたりします。
ハッピーエンドだと思うけど、他の人から見たらそうとも言い切れんかな〜って感じです。
じじいも死にネタも別れも勘弁!って方は引き返して下さいませ〜すんませんm(__)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『蜘蛛糸のロマンス』 (前)

 

 

 

 

 

「嘘、でしょ・・・?」

「・・・そうだったら良いんですけどねぇ。」

イルカ先生はそう言って笑った。

 

いつも通り任務帰りにイルカ先生の家に寄って、夜ご飯を一緒に食べて、食後の一服中に突然言われた。

体調不良が続いたので、病院で簡単な検査を受けたら、後日精密検査を受けるように言われた、と。

まだ疑いがあるだけだと、イルカ先生はニコニコしながら言った。

「詳しくは結果が出たらお話ししますから。持ち帰りの仕事があるので、今日は帰ってもらえますか?」

口を挟む隙を与えず、イルカ先生は矢継ぎ早に淡々と続け、オレは家から追い出された。

病名も何も教えてもらえず、あまりに突然で訳が分からない。

扉を挟んで話し掛けても、イルカ先生の態度は頑なで、これ以上どうにもなりそうになかった。

連絡待ってます、とだけ残してオレは自宅へと戻った。

 

 

 

 

 

それから二週間。

結果が出たら話す、というイルカ先生の言葉を鵜呑みにして、オレはただ待った。

受付にも家にもイルカ先生の姿は見られず、オレはただ待つしかなかった。

報告には必ず自分で出向くようにしたし、任務後はイルカ先生の家に寄って帰るのが習慣になってしまった。

それでも、ただの一度も、イルカ先生の姿を見ることは叶わなかった。

時が経つ程、心配は苛立ちへと変わっていった。

焦慮が募る。

オレとイルカ先生は恋人同士ではなかったのか?

恋人が病に侵されているかもしれない、なんて聞かされて心配しない訳がない。

イルカ先生の意図が分からない。

一体オレにどうして欲しいのか・・・。

そうして、イライラと毎日の任務を消化していると、漸くイルカ先生から手紙が届いた。

心急いて乱暴に封を切ると、見慣れたキレイな字が目に入る。

 

『精密検査の結果、完治は難しい病とのことでした。

今までの様な関係を続けることは出来ません。

ごめんなさい、終わりにして下さい。

うみのイルカ』

 

どのくらい動けずにいただろう。

そこに書かれた事実を受け止められなくて、何度も何度も読み返した。

一方的な別れの文。納得出来る訳がない。

でも、それより何より、イルカ先生の病は治らないという事実。

背筋を冷たい空気が流れ、体温が下がるのが分かる。

足許が崩れていく気がした。

立っていられなくなり、思わず屈み込んだ。

それまでの苛立ちは恐怖へと変化する。

―置いていかれる。

イルカ先生がいなくなる。

イルカ先生は・・・死ぬ?

そこに考えが至り、居ても立っても居られず、震える足で駆け出した。

 

置いていくのはてっきり自分だと思っていた。

忍を生業としている以上、死は常に傍らにある。

任務の確立からいっても、先に逝くのは自分の方だと・・・。

それなのに。

「だから嫌だったのに・・・。」

低く呟いた。

大事なものなんて作りたくなかった。

大切な人は皆死んでしまった。

怖い。怖い。怖い・・・。

また置いていかれるのか。

 

奥まで踏み込まずに付き合っているはずだった。

距離を置いて、上手く誤魔化せているはずだった。

細く長く、蜘蛛の糸の様な関係を望んでいたはずだったのに。

何時の間に・・・。

何時の間にか、イルカ先生はオレの心に巣を張って、大きな存在になっていた。

涙が流れた。

―イルカ先生を失うのが、怖い。

 

 

 

 

 

家にも、受付にも、アカデミーにも、イルカ先生の姿は無かった。

オレは気ばかり焦って、どうにかなってしまいそうで。

涙は次から次に溢れ出す。

震えの止まらない手で忍犬を口寄せし、イルカ先生を探すように伝える。

パックンはギョっとしていたが、何も聞かずに動いてくれた。

イルカ先生は病院に居た。

 

 

 

 

 

 →(後)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ラブバンドの「蜘蛛糸のロマンス」という曲名をまんま拝借v
長くなってきたので二つに〜次で終わりです。
ご覧頂きありがとうございました〜!

'07/1/9 葉月

 

←戻る