瓶底先生 13
後から思えば、この頃のオレは舞い上がって勘違いをしていたんだと思う。
瓶底が過去の話をオレだけにしてくれた、と舞い上がって。
瓶底の過去の話を聞いて、コイツにはオレしかいない、と勘違いをして。
オレが傍で支えてやらなきゃいけない。助けてやらなきゃいけない。
もう二度と死にたいなんて思わないように。
生きてりゃ楽しいことはいっぱいあるって思わせなきゃ、って。
同情して、心配して、お互い両親を亡くしてるっていう妙な仲間意識もあって。
オレだけは何があっても味方でいよう、って気持ちでいっぱいだった。
一週間後の日曜日は本当に楽しく過ごせた。
瓶底は始終ご機嫌で、オレも楽しみにしてた日曜だから気分は浮かれっぱなし。
ピアノを教えてもらって、練習の後は一緒に夕食。
飲んで食べて笑って、とにかく楽しかった。
楽しい時間はあっという間だ。
瓶底も楽しそうで嬉しかった。
瓶底の笑顔を見ると嬉しくなる。
楽しんでるのが分かって安心する。
コイツの笑顔がもっともっと増えればいいと思う。
それから、毎週そんな時間を過ごした。
それだけでは足りず、平日の仕事帰りに寄ることも増えた。
仕事終わりの時間が同じ日に、練習に寄ったり飲んで帰ったり。
こないだは仕事帰りに映画にも行ったなぁ。
最近のオレは暇さえあれば瓶底と遊ぶようになって、今まで以上に瓶底と過ごす時間が増えた。
お節介な性格は自覚してる。
余計なお節介かもしれない、と思いつつも瓶底を放っておけなくて。
何か支えになる物が出来ればいい。
瓶底にとって楽しいと思える時が増えればいい。
例えばオレと過ごす時。
ハナちゃんと過ごす時。
楽しみがあれば人間って頑張れるもんだから。
そう思っての行動が、そのままオレに返ってきた。
瓶底と過ごす時間が楽しみで楽しみで。
練習が楽しくて、一緒に飲んだりする時間が楽しくて。
こんな気分は久し振りだった。
まるで春が近付いて、意味も無くウキウキしてくる感じ。
紅先生にも「最近ご機嫌よねぇ。何かいいコトあった?」なーんてからかわれる始末。
って、オレが楽しんでどうする・・・。
いやいや、これでいいはずだ!
瓶底も楽しんでる・・・と思うし。
一緒に楽しかったら一石二鳥じゃないか。
うんうん!
そういうことにしておこう。
という感じで、プライベートの時間の多くを瓶底と過ごすようになった。
そんな状態が暫く続き、季節も変わり始めた頃。
オレは勘違いに気付いた。
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うわっ!前回のは11月でしたか・・・半年以上経ってる・・・。
瓶底放置してばっかでごめんなさいー!
ご覧頂きありがとうございました〜!
'09/7/9 葉月