最終電車に揺られて 1

 

 

 

 

 

随分前から名前は知っていた。

有名な人だから。

男前で仕事も出来る。

女子社員の間で凄い人気で、コッソリとファンクラブらしき物まで存在するらしい。

直接関係ある人では無かったけど、噂だけは勝手に耳に入る。

ウチの部内の「ファンだ」と公言する後輩が何時も騒がしくその名を口にするから耳タコだ。

強引に写真なんかも見せられた。

おいおい、どうやって撮ったんだよこの写真・・・。

確かに男のオレから見ても、その辺にはいないレベルの男前だ。

その上仕事も出来る人らしいし。

ずるいよなぁ・・・出来過ぎじゃないか、そんなの。

「・・・遊んでそー。」

見せられた写真のはたけカカシのいい男っぷりが余りにも様になってて、つい憎まれ口を叩いてしまった。

本当にそんなこと思ったわけじゃないけど。

だって、良い所ばっかり聞かされて、同じ男としてちょっと悔しいじゃないか。

普通レベルの男の可愛い抵抗じゃないか。

直ぐに取り上げられて「もう見せてあげません!」とデコピンまで喰らわされてしまった。

うぅ・・・先輩に向かってこの仕打ちは無いんじゃないの?オレが見せてって頼んだんじゃないだろー!

 

 

 

 

 

ある朝、通勤電車の中でその姿を見つけた。

その日は少し寝坊をしてしまって、普段とは違う車両に乗った。

ホームに着いた時には電車は発車寸前で、慌てて最後尾に乗り込んだ。

そこに彼の姿はあった。

座席の一番端で背中を丸めて、長い足と腕を組んで目を閉じている。

最初は眠っているのかと思った。

朝日を浴びて髪をキラキラ光らせて、穏やかな表情を浮かべて、それがまた凄く絵になって。

本当に男前だ。

オレは、はたけカカシから一番離れた扉の前に立って、会社の在る駅に着くまで何度も盗み見た。

駅に着く度に人が増えて減って。

人と人の隙間から、はたけカカシに視線を移す。

相手はずっと目を閉じているから、一度も目が合うことはなかった。

それから。

毎朝同じ車両に乗った。

同じ電車を使っているんだと分かったから、何故だか同じ車両に足が進んでしまって。

はたけカカシは毎朝同じ席に座って、毎朝眠っているみたいに目を閉じて、電車に揺られている。

必ず毎日同じ席に座っているから、きっと始発駅から乗っているんだろう。

ずっと目を閉じているから眠っているのかと思っていたけど、そうじゃなかった。

お腹の大きな女性がはたけカカシの前に立った時、直ぐに腰を上げて席を譲ったから。

何度も頭を下げる女性に向かって優しく笑い掛けて席を譲り、さり気無く場所を移動する。

はたけカカシのその笑顔に釘付けになった。

へぇ、あんな優しい顔して笑うんだ・・・。

優しい人なのかな。

そこに考えが至った時には、もう目が離せなくなっていた。

 

 

 

 

 

・・・続きます。

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最終電車イルカ視点〜♪
今んとこプチストーカーなうみのイルカでお送りしております(笑)。
まだまだやるぜ〜リーマンvvv
ご覧頂きありがとうございました〜!

'07/8/9 葉月

 

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