翌朝

 

 

 

 

 

体の痛みで目が覚めた。

ギシギシいう体の理由を眠気の抜けきらない頭で考えたら・・・はっきり覚醒した。

―あぁ、昨夜カカシ先生に抱かれたんだ。

意識を失うまで感じていた体温は当然のように傍にはなく、シーツを弄ると冷え切っていた。

こんな朝を迎えることは予想していた。

覚悟の上で昨夜の行動に踏み切ったわけだが、実際そうなってしまうと酷く胸が痛い。

「軽蔑されたかな・・・。」

ぽつりと言葉が漏れた。不思議と涙は流れなかった。

泣いて泣いて失恋を乗り切ろうと思っていたのに・・・。

はたけカカシが好きで、好きで好きで仕方なくて。

気持ちに気付いてからは抑えきれなくて。

日常生活に支障をきたすほど。

焦がれて焦がれて、あの人を想わない日は無かった。

相手はエリートで上忍で強くて誰もが知る実力者で。

元教え子というつながりがあったから、懇意にしてくれているとわかっていたから。

ただの中忍でアカデミー教師のオレなんかに、手の届く相手じゃないとわかっていたから。

叶う想いではないとわかっていたから。

一度だけでいいと思った。

一夜をあの人と共に出来るなら、その思い出に一生を捧げようと。その思い出を胸に死んでもいいとさえ思った。

「はは・・・。」

自嘲するような笑みが浮かんだ。

後悔・・・・・・はしていない。したくもない。

だが、今後を考えると笑わずにはいられなかった。

自分が軽蔑されるのはいい。

稀に顔を合わせるくらいだ。冷たい視線を浴びせられたとしても甘んじて受けよう。

ナルトは?他の教え子達は?これが原因で子供に害が及びはしないだろうか。

あのはたけカカシに限ってと思いたいが、懸念を抱いてしまう。

周囲への影響を考えずに感情だけを優先してしまった自分を少し後悔した。

「はぁ・・・。」

知らず知らず溜息を吐き出していた。

その時扉を開く音が聞こえた。

 

 

 

 

 

「イルカ先生!起きた?朝ごはん勝手に作っちゃったんだけど食べれそう?」

視線の先には、水の入ったコップを片手に持ったカカシ先生が立っていた。

体大丈夫?と声を発しながらオレに近付く。

都合の良い夢みたいだと思った。現実とは思えなくて。

ゴクリと唾を飲み込んだら咽せた。

咳き込むオレにカカシ先生は水を飲ませ、背中を擦ってくれた。大きな暖かい手でゆっくりと。

「大丈夫?少しずつ飲んで・・・。」

言いながら生理的に浮かんだオレの涙を指先で拭う。

それを切っ掛けに、涙が次々と溢れ出して止まらなかった。

「・・・っ。カカシ、先生。何で・・・いるんですかぁ・・・っ。」

しゃくり上げるオレを抱きしめ、

「当たり前でしょ。」

とカカシ先生は腕に力を込めた。

「アナタ昨夜は何も聞いてくれなかったじゃない。」

「・・・っく。」

「あのね・・・。」

頬に、瞼に、額に、唇にキスの雨を降らせ、カカシ先生はゆっくり口を開いた。

「オレもずっと前から好きだったんですよ。」

ずっとずっと、オレだけを好きでいてくれたこと。

ゆっくり関係を進めようとしていたこと。

昨夜のオレの行動が途轍もなく嬉しかったこと。

でも、気持ちをつなげる前に体をつなげてしまって後悔した、と。

辛い思いをさせてごめんなさい、と頭を下げてもくれた。

酒の勢いでせまって、謝るのはこっちの方なのに・・・。

最後には何度もオレを夜のオカズにしていたことまで暴露してくれた。

流石にそれを聞いた時には恥ずかし過ぎてまともに顔を見れなかった。

「ね?イルカ先生。好きな人と一夜を過ごして、その人を置いて帰れるわけないでしょ?」

アナタ誤解してそうだし、自分の気持ちを伝えなきゃ帰れるわけないよ、と続けた。

その後カカシ先生は、恭しい仕草で姿勢を正し、オレの手に口付けて言った。

「イルカ先生、好きです。付き合って下さい。大切にします。」

左右色の違う瞳に見つめられ、幸せのあまりクラリと眩暈がした。

湧き上がる自分の気持ちを抑えきれず、涙が頬を伝う。

「はい。っ・・・はい!・・・カカシせん・・・っ好き、・・・ですっ。」

再びしゃくり上げ始めたオレの体を、カカシ先生の体温が覆った。

広い胸の中で涙を流し続けるオレを優しく抱きしめながら、カカシ先生は困ったような微笑みを浮かべた。

「あんまり泣かないで。我慢出来なくなっちゃう。・・・昨夜みたいに気持ち良いことして鳴かせちゃうよ?」

耳元で囁かれ、ひくりと涙が止まった。

顔を真っ赤にして俯くオレにキスをしながら、

「今日はゆっくり休んで、その後はいっぱい愛し合おうね。」

なんてニッコリ笑いかけるから、オレはこれ以上ないくらい赤面してしまい、更に俯いた。

「昨夜はあんなに大胆だったのにねぇ・・・。」

意地悪くカカシ先生はそんな言葉まで付け加えるもんだから、オレはもう顔を上げられなかった。

 

 

 

 

 

  おわり

 

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酔っ払いながら書いたもので、カカシ先生いつもと違う気が・・・。
私の中でのカカシ先生はヘタレなはずなんですけど・・・ありゃ。
初の男前なカカシ先生じゃない〜!?とか思いながら書きました。
どでしょかf^_^;
最後までご覧頂き、ありがとうございました!

'06/3/9 葉月

 

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