蟒蛇
最近男の尻を形振り構わず追っかけ回してる。
マイスウィートハニー☆イルカ先生vvv
なかなか落ちてくれない手強いイルカ先生。
そんなイルカ先生のハートを射止めようと、日夜画策してるのだ。
担当の子供達を介して知り合ったのは、半年ほど前のこと。
今にして思えばきっと、初対面での笑顔にノックアウトだったのだろう。
しばらくは受付所で顔を合わせるだけの関係でしかなかった。
もっとお近付きになりたくて、子供をダシに酒の席に誘えば快諾してくれた。
完全に恋に落ちたのはその時。
赤く染まった頬。潤んだ瞳。何と言っても笑顔が良い。
そして唇を舐める舌。
―キスしたい・・・!
ごめんなさい、イルカ先生。欲情しちゃいました。
その場で想いを告げた。
『オレ、イルカ先生のこと好きかもしれない。』
『・・・ありがとうございます。光栄ですよ。』
・・・流された。あれ?あ、そうか。こういうことは素面で言わなきゃね。
そう判断したオレは、翌日から猛アタック開始☆
好きです。愛してます。惚れました。付き合って。オレを好きになって。
色んな言葉で迫ったけど『ご冗談を。』の一言でサラリとかわされてばかりだった。
あぁ、『やらせて?』って言った時は流石に殴られた。失敗失敗。
奢りますから!と、ついでに子供もダシに誘えば、相変わらず酒は付き合ってくれるので、酒を酌み交わしながらも懲りずに口説いた。
口説いても口説いてもかわされてばかりだったオレは、多少強引な手段を使うことにした。
名付けて、「酔い潰して既成事実を作ってしまえ作戦!」我ながら安直な作戦名だぜ・・・ふっ。
あぁ、卑怯でも何とでも詰るがいいさ!汚い手を使ってもイルカ先生を手に入れたいんだよ!気持ちは後で手に入れてやる!HAHAHA!(←アメコミ風)
そんなこんなで、開き直ったオレは早速作戦を実行したわけだが・・・。
実は5戦4敗中なのだ。ただ今5敗目に向けて突進中・・・。
おかしい・・・オレも大概酒は強いはずなんだけど。
酔い潰れたところを甲斐甲斐しく介抱して、胸キュン☆なところをバッチリ決める計画だったはずが・・・。
それなのに、先に意識を手放すのはいつもオレ。送ってもらうのもいつもオレ。介抱されるのもいつもオレ。
おかしい・・・・・・・・・・・。
「イルカ先生ってぇ・・・蟒蛇・・・な上にザル?」
「やっと気付いたんですか?ニブチンですねぇ。」
グビグビっとビールを飲み干し、ニカっと営業用スマイルをされた。
あぁ・・・そういえば、飲んだ翌日には大枚が財布から消えてたなぁ。
項垂れて妙に納得。
うぅ・・・。眠いぃ〜もう限界かも・・・。最近寝不足だし・・・。
「ですから、何回飲んでも、何時間飲んでも、何杯飲んでも、あなたの前で酔い潰れることはありませんよ。」
ぎくっ。計画ばれてる!?
「悪いですけど魂胆バレバレですよ。酔い潰して手籠めにしようって考えでしょ。」
ぎくぎくっ!
「・・・・・・わかっ・・・てて、何で付き合ってくれるんれすか?」
「そりゃぁ・・・・・・。タダ酒ほど美味い物はないですからねぇ。」
ガックリ。そこで思考は停止した。
次に脳ミソが働き出したのは、朝日も眩しい時間だった。
見慣れた天井が目に飛び込む。
―あぁ、またイルカ先生が送ってくれたのか・・・情けね〜!
「・・・イルカせんせー」
「はい?」
「どわぁっ!!」
すぐ傍から返事が返って来て、飛び起きた。
「な、なな何でイルカ先生が隣に・・・!?ふと、布団・・・に?」
「・・・あんたが帰るなって離れなかったんでしょうが。」
心底迷惑そうな表情を浮かべるイルカ先生に、ギクリと嫌な汗が浮かんだ。
―嫌われた?今までこんな表情されたことない・・・。
「ご、めん、ごめんなさい!ご迷惑をお掛けしてすみません!!」
「じゃあ、私はこれで。」
「ごめんなさい!怒ってるの?イルカ先生?嫌いにならないで・・・。」
起き上がろうとするイルカ先生の手を慌てて掴む。
「・・・怒ってなんかいません。」
「嘘。目も合わせてくれないし、声冷たい・・・。ごめんなさい。ごめんなさい。お願い。嫌わないで・・・。」
「嫌うだなんて・・・そんな。」
嫌いどころか・・・ブツブツ言いながら鼻の傷をポリポリ掻いている。
はぁ、とため息を一つついて、姿勢を正し、やっとこっちを見てくれた。
「あのね、カカシ先生。あんた初めて飲んだ時、オレに何て言ったか覚えてます?」
「好きって言ったこと?」
「好き『かも』ですよ。『か・も』」
イルカ先生は、人差指でオレの鼻面を突きながら、『かも』をやたら強調して言った。
「その後も『好き』とか『惚れた』とか毎日軽々しく口にするし、その上『やらせて』なんて人を馬鹿にし過ぎです。
いつか誠意ある言葉を聞けるかなって思ってましたが、いつまでたってもあんた馬鹿だし、馬鹿なこと考えてるし・・・。」
そこまで一気に捲くし立ててプイっと横を向いてしまった。
「オレばっかり期待してドキドキして、疲れちゃいました!」
横を向いたままのイルカ先生の頬が赤い。
―それって・・・。それって・・・!!!
「オレはとっくにアナタに」
「待って!イルカ先生。」
―待って、待って。待って!
手を引き、強引にこちらに向かせる。
イルカ先生の目が見たい。
「オレのこと好きになってくれたの?」
じっと見つめて問うと、イルカ先生は双眸を揺らし、睫を震わせ目を伏せた。
「アナタは憧れの人でしたから。恋に落ちるのは早かったです。好きでもない相手と頻繁に飲みに行くほど暇じゃないんですよ・・・。」
かぁ〜っと頬を紅潮させながら、はっきりと言い切ったイルカ先生につられて、オレまで赤くなってしまった。
予想外の展開に固まってしまう。沈黙が流れる。
「・・・何とか言って下さいよ。アナタは?まだオレのこと好きですか・・・?」
「当ったり前じゃないですか!好きです!大好きです!」
「本当に?どこが?オレのどこが好きですか?」
口を開きかけたオレの唇に指先を当てて制し、言った。
「真面目に告白して下さい。」
正座をして、背筋を伸ばして、真っ直ぐにイルカ先生に向き直る。
あぁ、なんて緊迫した一瞬。
こんな心地良い緊張感、初めて味わうかもしれない。
「イルカ先生。オレはアナタのすべてが好きです。アナタという存在が好きなんです。大好きなんです。」
具体的には、笑顔とか、厳しいけど優しいとことか、情に厚いとことか、クソ真面目なところも、もうすべてです!特に笑顔が大好きなんです!
イルカ先生の好きなとこをたくさん並べた。
キスしたくなる可愛い唇とか、舐めたくなるピンク色の舌とか、触れたくなるキレイな項とか、まだまだあるんだけど、これは怒られそうだから黙っとこ。
「今まで嫌な思いさせてごめんなさい。でも気持ちは本当です。大好きです。」
最後に頭を下げた。
「ごーかっくvvv」
オレの真剣な告白に、イルカ先生は破顔一笑し、オレの頭を「よしよし」と撫でてくれた。
もう100万ドルの笑顔って感じ?
オレってば何て幸せ者!更に深くイルカ先生に落ちちゃったよ。
「うわ〜ん!イルカせんせー!!!」
今にも昇天しちゃいそうな幸福感に満たされて、調子に乗ったオレはガシっとイルカ先生を抱きしめた。
その途端何とも言えぬ圧迫感が腹に生じ・・・。
その結果。
「う゛ぇ・・・イルカぜんぜ・・・・・・吐く。」
「えっ!ちょ・・・あんた!こんなとこでや・・・ぎゃぁぁっっ!!!」
「お゛・・・ぅえ゛ぇ゛〜〜〜〜〜!」
危うくイルカ先生と畳に汚物を吐き掛けるとこだったが、イルカ先生が上忍顔負けスピードで、オレの顔をゴミ箱に突っ込んでくれた。
うぅ・・・ホッとしたやら悲しいやら。・・・トホホ。
ゴミ箱に一吐き。トイレで二吐き。胃を空っぽにしてやっと治まった。
イルカ先生はトイレでは優しく背中を擦り続けてくれた。
―愛を感じるなぁ。今日は『初擦ってもらい記念日』だvvv
「イルカせんせー、何か頭痛いかもぉ・・・。」
再び布団に戻されたオレは、上目使いで少し甘えてみた。
また頭よしよししてくれないかな〜なんて計算をしつつ。
「二日酔いでしょ。カカシ先生オレと同じくらい飲んでましたからね〜。」
自業自得ですね〜なんて冷たくさらっと言っちゃって、帰り支度まで始める。
「え、イルカ先生もう帰っちゃうの!?」
「仕事がありますから。アナタはお休みでしょう?もう少し寝てなさいね。」
ポンっと額に手を置かれ、イルカ先生の温もりに浸る。
―あぁ、イルカ先生あったかいなぁ。
「イルカ先生大好き。」
「・・・オレも好きですよ。」
頬を赤く染め少し照れながらも、同じ気持ちであることを伝えてくれる。
幸せすぎて怖い。どうか夢じゃありませんように。
「あ、カカシ先生。これからも週一くらいでお酒付き合って下さいね。」
・・・週一はちょっと辛いですぅ。
「オレ酒大好きなんですけど、蟒蛇だしザルだし、なかなか満足するまで飲めることってないんですよ〜。酒弱い人と飲んでも気ぃ使いますしね。」
その点カカシ先生はお強いですから安心です。嬉しいなぁ!
なんて、嬉しそうに笑うからオレは俄然張り切っちゃった。
「精進します!」
可愛いイルカ先生の笑顔を守る為に!満足してもらえるように!
頑張れ!オレの肝臓!
おわり
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無駄に長くなっちゃった・・・。
どんどんカカシ先生がアンポンタンな感じになっちゃいました・・・ガーン。
変なテンション(汗)。
最初想像してたのはもちょっと静かな感じだったんですけど。はは。
書いてる本人がアホな人間なので仕方ないかも(笑)。
最後までご覧頂き、ありがとうございました!
'06/1/21 葉月