展示に置いてる長めのお話・瓶底先生の二人です。
二人のくっついた後のお話。

 

 

 

 

 

9、肝試し

 

 

 

 

 

「イルカ先生早く早く!」

瓶底が弾んだ声でオレを呼ぶ。

オレは食器を洗い終え、駆け足でリビングへ戻った。

クーラーの効いた少し肌寒い部屋で掛け布団を頭から羽織り、テレビの前で丸くなる瓶底の隣に腰を下ろす。

「始まりましたよ!」

瓶底がこんなに楽しそうなのは今から始まるテレビ番組の所為だ。

夏恒例の怖い話の特番で、本当にあったらしい話をドラマにした心霊物。

瓶底は怖がりのクセに見たがりで、オレはよくそれに付き合わされる。

オレの腕に自分の腕を絡ませて、これでもかってくらいくっついて来る。

わざわざ布団まで持って来ちゃって。

そんなに怖いなら見なきゃいいのにって思うけど、本人はそれで楽しいみたいだから付き合ってるのだ。

オレは怖くも何ともないから、瓶底が怖いシーンの度にビクっと震えるのが面白くて、そっちばかりを楽しんでる。

偶に「わっ!」とか言って驚かすと、プルプルしながら涙目になって怒るし。

CMの最中にトイレに行くと付いてくるし。

お前は子供か!って感じだけど、ほんと可愛いヤツだ。

テレビに熱中している瓶底をチラチラ盗み見ると表情は真剣そのもので、オレのことなんて全く目に入っていない。

オレは気付かれないようにゆっくり顔を動かして、瓶底の首にふっと息を吹き掛けた。

「イイイイイルカ先生っっ!!!」

大袈裟に肩を揺らせて瓶底が怒った。

「あはは!ごめんごめん。ほら、ちゃんと見ないと。」

そう言って背中を軽く叩いて促すと、口をへの字に曲げて視線をテレビに戻す。

「もう・・・。」

拗ねたようにブツブツ言う瓶底が可笑しくて。

オレはくつくつと口の中で小さく笑った。

嫌がらせのお詫びにオレから腕を絡めて手をぎゅっと握ると、瓶底は嬉しそうに笑って握り返して来る。

そうしていちゃいちゃしながらテレビを見た。

番組が終わった後、瓶底は布団を剥ぎながらオレに文句を垂れ始めた。

「イルカ先生は何で意地悪ばっかりするんですか!」

「可愛いからです。」

「か、可愛くないです!次やったら本当に怒りますからね!」

瓶底の「本当に怒る」姿を見てみたい・・・。

オレはまた悪戯心が湧いて来て、瓶底の背後に視線を少しずらして、

「・・・あっ!!!」

大きな声を出した。

瓶底は顔を引き攣らせ、声にならない悲鳴を上げながら物凄い勢いでオレに抱き付いて来る。

オレは堪え切れなくなって、抱き締めながら大声で笑った。

「酷い!イルカ先生酷いっ!!!」

からかわれたと知った瓶底は怒るどころか涙目で。

ほら、やっぱり怒らないじゃないか。

オレは愛しくなって力一杯抱き締めた。

「イルカ先生なんてもう知りませんっ!」

瓶底は拗ねてオレの腕から布団の中に潜り込む。

オレは笑いを堪えながら布団の中のでっかい子供をあやした。

「ごめんごめん。もうしませんよ。そんなに怖がりなのに何で怖い番組見たがるかなぁ・・・。」

「怖がりだけどイルカ先生とくっついて見るのが楽しいんですもん!」

布団の中から引きずり出したら、瓶底はそう言ってぷいっと顔を背ける。

オレの顔を見ないように目まで瞑っちゃって。

あーもー!何て可愛いヤツ!

オレは頭をグリグリ撫でてやった。

「じゃぁ今度肝試しでも行きましょっか?有名な心霊スポット調べて。」

「・・・そんなのしたらオレちびっちゃうかも。」

情けない声でそんなことを言うもんだから、オレは更に笑いが止まらなくなる。

「大丈夫!幽霊出たらオレがやっつけてあげますって!」

「イルカ先生何で怖くないの?」

「だってオレ幽霊見たことないし。居ると思ってないですもん。」

瓶底は頬をピンクにしながらハーっと息を吐いて、

「イルカ先生カッコいー男前ー。」

と呟いた。

「惚れ直した?」

瓶底が大きく頷いたから、オレはピンクのほっぺに小さくキスをした。

肝試しに行くのが楽しみだ。

怖くてちびっちゃう瓶底も見てみたい、なーんて思ったことは内緒だ。

 

 

 

 

 

おわり

 

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ラブラブー?(≧▽≦)vv
もうねーギャグなんてものは一切無いですけどねー肝試しも全く無いですけどね!はは!
暑くなって来たんでそういう季節かな〜っと。
イルカ先生ドSでちょっと変態になっちゃった(笑)。
ご覧頂きありがとうございました〜!

'08/7/9 葉月

 

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