8、告白(ギャグバージョン)

 

 

 

 

 

卓袱台を挟んで二人は対峙していた。

「いい加減観念しなさいよ。」

カカシは膝行りながらイルカを睨み付けた。

イルカは何も答えず、ジリジリと迫るカカシから逃げようと腰を浮かせている。

「えーと・・・ちょっとトイレ・・・。」

イルカは慌てて立ち上がったが、カカシの方が早かった。

一瞬でイルカの背後に回り、ぎゅっと抱きしめた。

「つーかまえたv」

透かさず体を弄り、首筋にキスを繰り返す。

「わーっ!今日は嫌だって言ってんでしょっっ!」

「もう我慢出来ません!一週間もしてないのにっ!」

イルカは全身を使ってカカシの拘束を解こうと暴れ回った。

「嫌だ!嫌だ!絶対嫌だーーーっっ!」

振り回した肘がカカシの鳩尾に決まった。

鳩尾に手をやり屈み込みながら、四つん這いになって逃げ出したイルカに目をやると、申し訳なさそうにこちらを見ていた。

カカシはイルカのその表情にイラつきを隠せなかった。

こんなやり取りを彼此一週間以上続けていたのだ。

最初の二、三日はカカシも我慢した。

残業だの持ち帰り仕事だの体調不良だの、のらりくらりと逃げられ続け、今に至る。

流石にカカシは疑いと苛立ちを募らせ、強引に迫ったのだった。

「・・・もういいです。どっか他所でやってきますから。」

立ち上がり、帰り支度をしながらチラリと目をやり冷たく言い放つと、イルカの顔から血の気が引いたのがわかった。

「アンタ浮気でもしてんじゃないの?オレは触れたくて仕方ないのに。そんなにオレのことが嫌だったらもう終わりにしましょうか。」

理由もわからず全身で拒まれ続け、カカシは傷ついていた。

自分だけがイルカを求め、イルカからは求めるどころか拒まれて。

体を拒まれて、心までも拒まれている気がして。

「さよなら。もう来ませんから。」

出来る限りの冷たい声で言い捨て、玄関へ足を進めると、

「う゛・・・・・・わぁーーーん!!!カカシ先生帰ったら嫌ですーーー!」

イルカが畳に突っ伏して大声で泣き出した。

初めて見る姿に、カカシはぎょっとして文字通り飛んでイルカの傍に戻った。

「ちょ、どうしたのイルカ先生!なんでアンタが泣くの!」

「ごめんなさい、ごめんなさい!カカシ先生が嫌なんじゃないんですーーー。ぅわーん!」

カカシは自分の胸に顔を埋めて、オイオイ泣きじゃくるイルカの背中をそっと撫でてやった。

泣きたいのはこっちだったんだけどなぁ・・・なんてこっそり思う。

「カ、カシ先生、っく。さよならなんて・・・ぅわーん!」

「はいはい。わかったよ。ごめんね、嘘だから。泣かないで。」

「怒ってるーーー!」

「わー!ごめんなさいごめんなさい!怒ってませんー!」

また強く泣き始めたイルカを、カカシはきつく抱きしめた。

結局カカシはイルカに弱いのだ。

大好きな人の涙になんて特に弱い。

惚れた方が負けってことだよなぁ、とイルカを抱きしめながらカカシは小さく苦笑した。

「ごめんなさい。もう怒ってないから理由を聞かせて?」

触れられることを拒んだ理由を。

あやすように背中を擦りながら優しく問うと、イルカは涙を堪えながら顔を上げた。

涙を浮かべた瞳で見つめられ、このまま押し倒したい衝動に駆られる。

―くぅぅ、なんて可愛い・・・!ここで耐えないと元も子もない!耐えるんだカカシ!!!

自分に無理矢理言い聞かせ、イルカに向かってニッコリ微笑んだ。口元は引き攣っていたが・・・。

「あの・・・じ、実は、ふ・・・・・・。」

「ふ?」

「ふ、太ったみたいで今まで着てた服が苦しくなったんですーーー!」

真っ赤な顔で一気に言い切ったイルカを前に、カカシは動かなかった。

「あ、の・・・。カカシ先生?」

「・・・・・・太った?・・・アンタそんな理由でオレを拒んでたのっ!?」

キッと睨まれ、イルカはたじろいだ。

「だって、」

「『だって』じゃないっ!理由も言わずに拒否されてオレがどれだけ傷ついたか!心配したかわかってんの!?挙句に太ったからだとおっ!?」

「こんな体に触られたくなかったんですもん!」

「こんな体もどんな体もイルカ先生でしょ!抑抑前は痩せてたってわけじゃあるまいし!」

「な、んだと〜〜〜!好きな人に肉の付いた体を触られたくないって乙女心がわかんねぇのかっ!!!」

「アンタ乙女じゃないでしょうがっ!!!」

「〜〜〜人が恥ずかしい思いして告白したのに!くっそー!もういい!寝ます!」

イルカにぷいっと外方を向かれ、カカシは我に返った。

「あ、嘘。ごめんなさい!待って、イルカせんせー!」

カカシの伸ばした手を冷淡な態度で払い除け、イルカは寝室へ入って行った。

残されたカカシは卓袱台の前で肩を落とす。

―怒ってたのはオレの方だったのに・・・。トホホ・・・。

 

何時まで経っても帰る気配もなく、寝室にも来ないカカシに、焦れたイルカが迎えに来るまであと少し。

 

 

 

 

 

  おわり

 

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ええっと・・・。
これはギャグ?って感じですが・・・。
ただただアンポンタンな二人になっちゃったf^_^;
イルカ先生までもちょっと壊れ気味で・・・あぅ。
最後までご覧頂き、ありがとうございました!

'06/4/10 葉月