6、女って怖い…。

 

 

 

 

 

「はぁ・・・・・・。いい天気だねぇ・・・・・・。」

昼間の上忍待機室。

カカシはソファに腰を掛け、天を仰いだ。

空には白い雲。今日もいい天気だ。

「あ〜ぁ・・・・・・。」

「なぁにやってんの、カカシ。不景気ねぇ。」

「ほーんと。こんなにいい天気なのに。あんたの周りだけ曇ってるわよ。」

声を掛けられ、そちらに顔を向けると、紅とアンコの両名が肩を並べていた。

「紅・・・。アンコ・・・。」

カカシの情け無い表情を見た二人は、顔を見合わせながら腰を下ろした。

向かいに座るカカシは、人魂を背負い、どよ〜んとした冷気を発している。

「一体どうしたってのよ。そんな顔して。」

「あ!分かった!受付の先生に振られちゃったのね!」

「まだ振られてないもんっ!」

うりゅっと瞳を潤ませるカカシを見て、紅とアンコは再び顔を見合わせる。

思わず失笑しながら続ける。

「あんた・・・。」

「仮にも里の誇る上忍の姿じゃないわねぇ・・・。」

「ほれほれ。お姉さんに話してみなさい。」

「姉さん・・・っっ!」

詰め寄る二人の手を取り、カカシは一気に捲くし立てた。

「あのね。あのね。聞いてくれる!?イルカ先生ってば最近すっごく冷たくって、全然触らせてくれないし!手を握ったら叩くし!キスどころかセ」

「「ストーーーップ!!!」」

二人は揃ってカカシの口を塞いだ。

「あんた!場所と時間を考えなさい!」

「真っ昼間から何言ってんの!」

「「慎みを持ちなさい!!!」」

物凄い剣幕で声を揃える二人を交互に見ながら、カカシはキョトンとした。

「あのねぇ、カカシ。もうちょっと憚った方がいいと思うわよ〜。」

「そうそう。イルカちゃん真面目なんだから、そんなだとほんとに振られちゃうわよ。」

「イルカ・・・“ちゃん”・・・?」

「「いちいち反応すんなっ!!!」」

二人から揃ってゲンコツでどつかれた。

「痛い・・・。」

恨みがましい目で睨みつけると、二人は同時に溜息を吐き出した。

「まったく!・・・で?ご立腹中のイルカ先生が構ってくれないから凹んでる、と。」

「それだけなの?」

「・・・それだけ・・・です。はい・・・。」

「「んも〜〜〜情け無いっ!」」

二人は声をハモらせて言った。

こいつら良いコンビだよな〜なんてカカシはのん気に思う。

「こんなところでウジウジしてないでとっととやってきたらいいのよ。」

「ケンカの後のセックスは一番手っ取り早い仲直りの方法なのよ。」

「触らせてくれない、って。恋人同士なんだからちょっとくらい強引に迫ればいいじゃない!」

「そうよ!力任せに押し倒しちゃったらいいのよ!」

「ちょっ」

二人の声のトーンが上がって来た。

雲行きの怪しそうな会話の展開に、焦って声を掛けるが、既にカカシの声は二人の耳には入っていないようだ。

「ソフトSMなんて流行ってるみたいだし、いっそ縛っちゃえば燃えるんじゃない!?」

「あ、それいいかも!マンネリカップルだし燃えるわよ〜きっと!」

「ちょっと、あの」

「やっぱり基本は後手縛りよね!」

「縛りと言えば亀甲よ!」

「開脚縛りもエッチだと思うわ〜!」

「縛るついでに薬も盛っちゃうってどうかしら!」

「きゃーvいい案!イビキならめちゃめちゃ効きそうな媚薬持ってんじゃない?」

「きっともっとエッチな縛り方も知ってるわよね!きゃーv」

「こ、声がでか」

カカシの遠慮がちな制止の声は、白熱しまくっている二人にもちろん届くはずもなく・・・。

当事者そっちのけで盛り上がっている。

―ついさっき「慎みを持て」って叱られた気が・・・。こいつら絶対面白がってる・・・。

自分を目の前に、SMだの媚薬だのマンネリカップルだの、大声で好き放題言いたい放題。

流石のカカシも羞恥のあまり居た堪れなくなった。

コッソリその場を後にしようと腰を上げた瞬間、

「「ちょっと!どこ行くの!」」

力強い二本の腕に押し留められた。

「今からイビキに媚薬もらって来てあげるから!」

「ついでにエッチな縛り方も伝授してもらって来るわ!図解付きでね!」

「「ここで大人しく待ってなさいよ!?いい!?」」

「は、はひ・・・。」

物凄い勢いで二人から詰め寄られ、圧倒されたカカシから出た声は、大層情けないものだった。

姉さんにお任せあれvなーんて、ウインクを残して二人は嵐のように去った。

残されたカカシは呆然と独り言ちた。

「勢いのついた女って怖い・・・。」

 

 

 

 

 

後日。

何とかイルカに触らせてもらえるようになったカカシは、せっかくもらった媚薬とエッチな縛り方を使ってみたくて仕方が無かった。

―イルカ先生の機嫌を損ねず使うにはどうしたものか・・・。

画策した結果、酒をたくさん飲ませて、気が大きくなったところで実行してみた。

大量のアルコールが入り、普段よりいやらしくて素直になったイルカは、ノリノリで受け入れた。

その晩はこの上なく盛り上がり、カカシは「クセになりそー」なんて思ったのだが・・・。

翌日正気を取り戻したイルカは大層ご立腹で、別れるとまで口にした。

カカシは平身低頭して延延謝り続け、別れ話はなくなったけど、またイルカに触れない日々が始まるのだった。

―女って怖いと思ったけど、やっぱりイルカ先生が一番怖いねぇ・・・。

再び始まる禁欲生活に、そっと溜息をついたカカシだった。

 

 

 

 

 

 おわり

 

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お題22の後日談みたいな感じにしてみました!
イルカ先生全然出て来てない(笑)。
相変わらず「ギャグ・・・?」って感じですけど・・・(^-^;
縛り方調べちゃったv
色々あるんですね〜凄い!
私が聞いたことあるな〜ってのを使ったので、後手が基本とか間違いですよ!・・・多分。
最後までご覧頂き、ありがとうございました〜!

'06/7/25 葉月

 

 

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