瓶底(展示部屋の長めのお話に置いてあります)の二人でお題18。
バレンタイン小話ですv
くっついた後のお話になりますのでひとつよろしくです。

 

 

 

 

 

18、バカップル

 

 『ワンワン』

 

 

 

 

 

「イルカ先生、オレ犬になりたい・・・。」

「は?」

夕食の最中に唐突にそんなことを言われた。

オレは最後の一口を口に運んだところで、箸を咥えたまま暫く呆けてしまった。

「だってね!イルカ先生帰って来た時、犬だったらもっと前から気付くでしょ?じゃぁ玄関のドア開けて待てるでしょ?」

何が言いたいのかさっぱり分からん。

「犬だったらこの前見た映画みたいに、イルカ先生がピンチの時守ってあげられるでしょ!」

瓶底は頬を赤くしながら興奮気味に「犬だったら」と繰り返した。

なんとなーく言いたいことが分かって来た。

オレが家に帰って来た時、瓶底は何時もパタパタと音を立てながら玄関まで出迎えに来る。

犬だったら耳が良いから、オレが鍵を開ける前に気付いて、もっと早くから玄関で待てるということだろう。

この前見た映画というのは、主人公の飼っている犬が主を守ろうと闘うシーンがあった。

結局その犬は最後には死んでしまうのだけれど。

きっと、瓶底は少しでも長くオレの傍に居たくて、オレを守りたいと思ってくれてるんだろう。

それはオレも一緒だけど、「犬になりたい」なんて・・・えらくぶっ飛んだ考えに至ったものだ。

バカだなぁ、と思う。

反面、そんなところも可愛くて堪らない。

健気で、一途で、愛しい恋人。

オレは箸を置いて立ち上がり、瓶底の前に移動した。

頭を胸の中に抱え込み、よしよし、と優しく撫でてやる。

「バカだなぁ・・・人間の方が寿命長いのに。オレのこと置いていく気?」

言われてそこに気付いたようで、瓶底は「あ!」と小さく声を上げた。

「犬だったらこんなことも出来ないのに。」

そう言ってキスしたら瓶底は真っ赤になった。

ほんとに可愛いヤツだ。

ちゅ、っとわざと音を立てながら軽いキスを何度も唇に落とすと、瓶底は気持ち良さそうに目を閉じて、「もっと」と強請る。

長い間キスを繰り返して体を離したら、物凄い力で抱き付かれた。

「イルカ先生大好きっ!」

痛いくらいにぎゅうぎゅう締め付けてくるから、オレも負けじと腕に力を入れる。

「オレだって好きだっての!」

暫く好きだ好きだと言い合って抱き締め合って、飯の片付けもそっちのけで世界に二人だけ〜な状態。

「オレらってバカップル・・・。」

顔を合わせてクスクス笑った。

「あ、そうだ。今日はデザートがあるんです!」

弾んだ声でそう言って、瓶底はキッチンへ足を運んだ。

食卓へ戻った瓶底の両手の上には大きな皿。

「はい、イルカ先生。バレンタインチョコです。」

ずいっと目の前に差し出された薄い皿の上には、沢山のチョコレートが乗せられている。

カラフルなハート型のアルミカップに収められた小さなチョコが沢山。

どう見ても市販の物ではない。

今朝、冷蔵庫を開けた時にはこんな物無かった。

「これって・・・手作り?」

瓶底が嬉しそうに頷く。

「手作りって言っても溶かしてカップに流し込んだだけですけど・・・。」

ラッピングする時間無かったから裸でごめんなさい、と言った。

今日は瓶底は早番で、オレは遅番だったから、オレが帰るまでの数時間に急いで作ってくれたんだろう。

帰ったら飯の準備も出来ていた。

夕飯の準備もしてチョコレートも作って大変だっただろうに。

オレの為にこんなことまでしてくれて。

感動してしまった。

あ、ヤバイ。嬉しくて泣いてしまいそうだ。

一つ手に取って口に入れた。

味は市販のどこにでもある板チョコの物だったけど、うんと美味しく感じた。

「ありがとう。凄く美味しいです。」

一緒に食べよう、と誘って、口移しで渡した。

「イルカ先生、嬉しい?」

「うん。何で?」

「だって、女の人から貰った方が嬉しいんじゃないかな、ってちょっと心配だったから・・・。」

義理チョコは職場で何個か頂いた。

けれど、それとは比べ物にならないくらい嬉しい。

「カカシ先生がくれたのが一番嬉しい。凄く嬉しい。」

おすそ分け、と言ってもう一つ口移しで運んで、そのままキスをした。

さっきみたいな軽いキスじゃなくて、チョコが溶けてしまいそうな熱いキス。

唇を離したら瓶底の口の端には溶けたチョコがくっついていた。

それをペロペロ舐めて取ったら、

「イルカ先生も付いてる。」

そう言って唇を舐められた。

一生懸命オレの唇を舐めるのがまるで犬みたいで、そう言ったら瓶底は笑って「ワンワン」と犬の鳴き真似をして見せた。

それが可愛かったから、オレはまた口移しでチョコを食べさせてキスをした。

調子に乗って次次食べて、「ワンワン」言いながらお互いの唇を舐め合って。

ほんとバカップルだな〜と自分に呆れながらも、瓶底が可愛いから長い間そうしていちゃついて。

ふと気が付いたら、皿の上にはほんの数個しか残っていなかった。

一気にチョコを沢山食べた所為で、口の中が随分甘い。

オレと瓶底はチョコで一杯になった腹を休めようと、くっついて横になった。

いちゃいちゃしながら交わすキスは、甘い甘いチョコレート味。

「胸焼けしそうなくらい食べましたね・・・。」

瓶底は胸を擦りながらそう言って、少し苦しそうに笑った。

胸焼けがしそうに甘い、バレンタインデーの夜。

 

 

 

 

 

  おわり

 

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もうギャグでも何でもないし・・・その上まだくっついてもない二人のその後とか(^-^;
バレンタインなのでラブラブな二人を書きたかったんですーごめんなさいv
ちなみに会話に出て来る映画は「○○レジェンド」ってヤツ。
軽くネタバレ・・・?ごごごごめんなさいっm(__)m
14日過ぎたらさげて、瓶底終わったらコッソリお題に繋いどきまーす。

拍手ありがとうございました!

'08/2/9 葉月

 

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