アナタの手
食事の後片付けを終えてリビングに戻ると、カカシ先生は愛読書のいちゃパラを片手にゴロゴロしていた。
オレは読書の邪魔をしないように、少し離れたところに座ってテレビを見始める。
時時カカシ先生をチラチラ観察なんかしちゃったり。
あ、カカシ先生が動いた。
目はいちゃパラに釘付けのまま、仰向けで寝転がっていたのをうつ伏せに変えた。
長い足を膝で折り、膝から下を浮かせてゆらゆら揺らしている。
鼻歌まで口ずさんで何やらご機嫌な様子。
可愛いなぁ。
オレはテレビに視線を戻して一人笑った。
何でもないこんな時間が心地良くって。
「カカシ先生、熱いお茶でも飲みますか?」
「ん、お願いしまーす。」
特に何を話すでもなく、ただ傍にいるだけで嬉しくって。
お茶を置くついでに頬に軽くキスをしたら、
「ありがと。」
カカシ先生は優しい微笑みをくれた。
ほわっと胸が温かくなる。
幸せだ〜〜〜。
またテレビを見始めて、暫くするとバリバリ妙な音が聞こえてきた。
カカシ先生を見ると腕をひん曲げて背中を掻いていた。
肩甲骨の間辺りが痒いらしく、上から下から一生懸命に掻く。
左手のいちゃパラは離さず、右手で必死なカカシ先生。
何だか子供みたいだ。
それでも治まらなかったようで、傍にあった団扇で力任せに背中を擦る。
団扇は商店街で配っていた物で、骨も柔らかくってそんなに頑丈に出来てない。
あぁ・・・そんなに力入れてもぐにゃぐにゃ曲がるだけなのに。
案の定カカシ先生は気がすまなかったようで、もっと固くて長い物を求めてキョロキョロし始めた。
オレはぷっと吹き出しながらカカシ先生の傍にしゃがみ込んで、背中を掻いてあげた。
「この辺ですか?」
「あーそこそこ。気持ち良い。ごめんね、煩かった?」
カカシ先生がいちゃパラを閉じてオレを見上げる。
「いえ、カカシ先生があんまり必死だから可笑しくって。」
クスクス笑いながら背中を掻く。
カカシ先生は気持ち良さそうに目を細めながら小さく声を上げて笑った。
「何ですか?」
「いや、幸せだなーって思ったの。」
「そんな大袈裟な・・・。」
「大袈裟じゃないよ。痒いところを掻いてもらうのって凄く気持ち良いじゃない。それがアナタの手だから。また、ね。」
それが凄く幸せなんですよ。
そう言ってカカシ先生は笑った。
「じゃぁ、ついでにマッサージもしてあげます。」
オレは照れ臭くなって、カカシ先生の顔が見えないように背後に回った。
カカシ先生の背中を跨いで、肩からマッサージを始める。
あー頬が熱い。
カカシ先生がさらっと恥ずかしいことを言うからだ。
でも、そんなことを言われてオレも凄く幸せで、ニヤける顔を戻せずにいた。
「ありがとイルカ先生。イルカ先生の傍にいれて幸せです。」
カカシ先生がそう言ってくれたから、泣きそうになるくらい嬉しかった。
オレもカカシ先生の傍にいれて幸せです。
おわり
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自分の手が届かないところを掻いてくれる手があるって幸せですよね〜vvv
職場でものさしで背中を掻きながら思った。
ご覧頂きありがとうございました〜!
'08/8/9 葉月