※イルカカですよ。
ちょろっと色っぽいシーンありますのでご注意を!
愛とセックスとバカ暗部(後)
真夜中、控えめなノックの音が耳に届いた。
外は静かなもので、時折犬の鳴き声が聞こえるくらい。
聞き間違えではない。
腰を上げかけたその時、もう一度ノックの音がした。
まさか。
あの夜から一ヶ月と経っていないが、こんな時間に家を訪ねて来る人間など他に思いつかなかった。
逸る気持ちを抑えつつ、玄関へ足を進める。鼓動がうるさい。
扉を開けると、面を着けた暗部が立っていた。
「こんばんは。」
小さな声で暗部は言った。
「・・・こんばんは。」
反射的にイルカも返事をする。
暫く二人の間に会話はなく、扉を開けたまま黙って向かい合っていた。
冷たい風が頬を撫でた時、漸くイルカが動いた。
「・・・開けっ放しでは寒いですから。中入って下さい。」
イルカに腕を引っ張られ、暗部は遠慮がちに扉の中に入った。
今までとは全く違う殊勝な態度。
今までは挨拶もそこそこに、黙っていても勝手に上がりこんで来たのに。
「・・・もう来るなって言われたのに、また来てごめんなさい。」
小さな声で話し始め、イルカは黙ってそれを聞いた。
「オレ・・・あれからずっとアンタのことが頭から離れなくて・・・。」
面を外さないから声が中に篭り、少し聞き取りにくかった。
今までは面を着けて来たことなどないのに。
「アンタの顔が見たくて・・・。」
更に声は小さくなった。
「え?」
聞き取りにくいなんてものじゃない。
イルカが顔を傾けて耳を寄せると、暗部は驚いたように飛び上がった。
「ア、アンタのことばっか考えちゃって・・・!」
「は・・・?」
「今までと同じようにしてんのに反応しないし・・・アンタとのことばっか思い出してダメで・・・。」
「・・・何の話をしてるんです?」
「だから・・・!セックスしようとしてもダメ・・・だったん、だよ!」
最後の方は声が震えていた。
「オマケ、に・・・ここら辺が痛、いし・・・っ!」
胸の辺りを押さえながら必死に訴える。
「助けてよ・・・四六時中アンタのこと考えてて・・・苦しいんだよ・・・。」
何とかそこまで言い終えると、暗部は俯いて肩を震わせ始めた。
イルカは少しの間、目の前の暗部の姿をじっと見ているだけだった。
頭の中で暗部の言葉を反芻してみる。
今、自分はとんでもない愛の告白をされたのではないだろうか。
相手は自覚していないようだが、四六時中想って胸を痛めるなんて、恋煩いでしかないのでは。
自然と腕が伸び、気が付いたら胸の中へ抱き寄せていた。
「・・・オレにこうされるとどうですか?」
「よく・・・分からない。ドキドキ・・・する・・・。でも、まだ痛い・・・。」
胸を押さえながら言う。
素直な気持ちが返って来て、イルカは少し笑った。
「じゃ、これは?嫌ですか?」
イルカは面を外し、涙で濡れたカカシの唇にキスをした。
カカシは息を飲み、少し経ってから頬を赤く染めた。
「嫌・・・じゃない。な、なんか・・・恥ずかしい・・・。」
赤い顔をしたカカシが俯き、イルカはそれをきつく抱き締めた。
「カカシさん。それは恋ですよ。アンタはオレのことを好きになったんですよ。」
「恋・・・。好き・・・?」
呟きながらイルカをじっと見詰めるカカシの頬は、みるみる赤く染まっていった。
イルカが嬉しそうに笑いながらまたキスをした。
今度は少し深く。長く。
カカシは緩く目を閉じ、イルカに身を任せている。
不意にカカシの体から力抜け、崩れ落ちそうになった。
危ういところでイルカが抱き止める。
「ご、め・・・力抜けた。」
真っ赤な顔でイルカにしがみ付きながら、カカシが小さな声を出した。
イルカは廊下に座らせてやりながらキスを再開し、カカシは懸命にそれに応えた。
「オレ、アンタのこと好きなの・・・?」
「そうですよ。オレを好きになったから苦しいんですよ。胸が痛むんですよ。」
キスの合間に囁く。
「ほら、ココもこんなになってるのが証拠ですよ。」
体をゆっくりなぞっていき、下半身の熱に触れた。
「触って欲しいでしょ?他の誰かじゃなくて、オレに。」
その言葉にカカシは真っ赤になりながらも、素直に頷いた。
「ぐちゃぐちゃに濡れてますよ。こんなになってるのに・・・本当に反応しなかったんですか?」
「ん・・・少しか、たくはなったけど・・・はっ・・・ぁ、ダメ・・・だった。」
眉根を寄せ、快感に浸る表情に煽られる。
今までのように押されて流されるのではなく、自らこの男を抱きたいと思った。
この男を愛してやりたい。
イルカはカカシを口に含んだ。
そこはイルカの口の中で熱く脈打ち、次から次に蜜を溢れさせる。
「な、に・・・してんの。やめ・・・っ!」
感じているのに、気持ち良いはずなのに、何故だかカカシは暴れて嫌がる。
「嫌なんですか?何で?」
「何でって・・・こんな、の・・・皆やるもの?」
「皆、ではないかも・・・もしかして初めてですか?」
カカシは頷いた。
今までのセックスはただの処理、愛し合うセックスは初めてなのだ。
愛撫など受けたこともないのだろう。
イルカは嬉しくなった。
初めての男ではないが、愛し合うセックスの相手は間違いなくイルカが初めて。
もっと気持ち良くさせてやろう。
もう一度口に含むと、カカシが抵抗して声を上げる。
「や、だってば・・・ぁっ!」
「いい子だから大人しくして・・・気持ち良くしてあげるから。あと、声も小さく。ここ玄関ですよ?」
耳の傍で囁くと、更に頬を赤く染め、カカシは口を噤んだ。
手の甲を口に当て、声を漏らさないように耐える。
程なく、カカシはイルカの口の中に吐き出した。
熱いソレを口内に受け止めたけど、飲みきれずに端から溢れ出す。
イルカは手で押さえながら慌てて立ち上がり、洗面所へ向かった。
危うくカカシの上に零してしまうところだった。
洗面所で口を濯いで手を洗っていると、目の前の鏡にはヤケに頬の緩んだ自分の顔が映っていた。
「ニヤけすぎ・・・オレってば。」
小さく苦笑いを残し玄関へ戻ると、カカシはさっきの状態のままで動いていなかった。
「カカシさん立てますか?部屋へ・・・。」
カカシの顔を覗き込んだイルカは驚いた。
目から涙を流してボーっと一点を見詰めていたから。
「な、に泣いてるんですか!?泣くほど嫌だったんですか?」
慌てて涙を拭ってやると、漸く目が合った。
「あ・・・戻って来た。終わった途端にどっか行っちゃうから・・・オレ、置いてかれたって・・・。」
そう言って再び泣き出す。
「やっぱ迷惑なんだなって・・・オレ、のこと・・・っ嫌いなんだって・・・。」
「何でそんな考えになるんですっ!置いて・・・って5分も経ってないし。アンタの上に零しそうになったから慌てて洗面所行っただけですって!」
「アン、タっ・・・が悪い・・・オレのこと放って、くから・・・う・・・っ。」
イルカの胸に顔を埋めて、ワンワン泣き出した。
「あーはいはい。オレが悪かったです。思いっきり泣いて下さい。」
子供みたいに泣きじゃくるカカシの背を撫で、色んなトコにキスをして、イルカは気持ちを伝えた。
「言っておきますけどね、オレもアンタのこと好きになってんですよ。ずっと心配してたんですから。どっかで野垂れ死んでんじゃないかって。」
「野垂れ・・・って。そんな簡単に死なないよ。」
やっと泣くのを止め、カカシはほんの少し笑った。
「ほんとに?ほんとにオレのこと好き?」
「ええ。好きですから、オレときちんと付き合って下さい。もう今までのダラけた性生活は許しませんよ。」
「うん。分かった。」
「本当に分かってんですか?オレは軽い付き合いなんて出来ませんよ。本当にそれでもいいんですか?」
「分かってるよ。もうイルカとしかしない。絶対に。イルカと付き合う。」
イルカは優しく微笑んでキスをした。
「じゃぁ、今からアンタはオレの恋人。オレのものですよね?」
「うん・・・オレはイルカのこい、びと・・・。」
言いながらカカシは頬を染め、イルカの目を手の平で隠した。
「な、何か凄い恥ずかしくなってきた・・・。恋人なんて生まれて初めて出来た。」
イルカはクスクスと笑いながらカカシの手を取って指先に口付けた。
「オレを最初で最後の恋人にして下さいよ?」
「分かった・・・からっ、ちょっと離れて!」
「何で?」
頬に口付けながら訊ねる。
「オレ任務明けだった。・・・多分臭い・・・。」
「今更ですか?アンタのアレも口にしたのに・・・?」
「シャワー!シャワー貸してっ!」
イルカの言葉を聞いた瞬間、ゆでダコみたいに真っ赤になって、シャワーを貸せと暴れだした。
今更気にするなと言っても暴れて嫌がるので、5分で出て来るように言って風呂場へ連れて行った。
カカシは5分も経たずに出て来た。
ろくに拭きもせず、頭からは水滴を垂らせて。
イルカが冗談半分で言ったことを健気に守ろうとしている姿が可愛い。
愛しくて胸が締め付けられた。
頭を拭いてやり、そのまま押し倒して抱いた。
今までとは真逆のセックスで、カカシはイルカにされるがまま。
「こん、なセックス初めて・・・恥ずかし過ぎて死にそう・・・。」
「愛し合うっていうのはこういうことですよ。相手を全部知りたいんです。相手に全部曝け出すんです。」
イルカはカカシの色んな初めてを手に入れた。
カカシは恥じらいながらもイルカに全てを見せた。
その夜から全てが変わった。
気まぐれな猫のようだったカカシは、イルカに懐いて離れない犬のようになった。
ただの性欲処理だったセックスも、愛情を確かめ合う行為になった。
それから、カカシは健気で可愛い男になった。
「カカシさん。最近アンタ猫背になってません?」
「う、あ・・・その・・・うん。また背が伸びちゃって。他所の恋人見てると、大抵男の方が背が高いじゃない?」
身長が伸びたから、少しでも小さく見せようと猫背になっているらしい。
「イルカ、自分よりデカイ男が相手じゃ嫌かなと思って。イルカに嫌われたくないもん・・・。」
猫背にしたって本当の身長が変わるわけじゃあるまいし。
バカな男だと思うと同時に、そのバカさが愛しくなる。
揉める事もあったけれど、二人は長年一緒に過ごしている。
少しでも近くで過ごしたいからと、カカシはイルカを追いかけて教師になった。
バカな暗部だったカカシは愛を知り、イルカの傍から離れなくなった。
きっと、これからもずっと、イルカの傍にはカカシが居る。
おわり
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エロのみのオマケもあったり(*^^*)
こっちはちょっと控えめにしてみました。
オマケはカカシ先生にあんあん言ってもらいまーすv
抵抗ありそな方はここまでにしといて下さいな。
ご覧頂きありがとうございました〜!
'10/6/15 葉月