クリスマス記念小話。
リーマンカカイルです!パラレルです!
お嫌いな方はご覧にならないで下さいね〜ん(^-^)

 

 

 

 

 

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蛇口から流れ出す水がやけに冷たく感じる。

カカシは鏡に映る疲労の色の濃い顔を見て、苦笑を浮かべた。

世間はクリスマスイブで盛り上がっているというのに、自分はこんなところで一人で何をしているんだろう。

その時、鏡越しの視界に光が入った。

チカチカと点滅する光。

そこに携帯電話があった。誰かの落し物か。

パカっと開くと液晶に着信の文字。きっとこの携帯の持ち主。

「もしもしっ!?あぁーーー良かった!すみません。その携帯の持ち主なのですが、そちらは何処でしょうか・・・?」

―何だ男か・・・。

持ち主が女性でこれを切っ掛けにロマンスが・・・何て、ドラマチックなことを想像した自分が笑えた。

「会社のトイレに落ちてましたが、アナタは?木の葉の社員ですか?」

「うみのと申します。総務の人間でして・・・。」

「あぁ、うみのさんか。今から取りに来られるなら営業一課までどうぞ。後日なら警備室に預けときますんで。」

「あ、伺います。あの、そちら様は・・・?」

「・・・内緒。来たら分かりますよ。」

顔見知りが落とし主だと分かり、ふと悪戯心が湧いて、意地悪な返事をして電話を切った。

 

 

 

 

 

一時間も経たない内に、携帯の持ち主はやって来た。

「あぁ、何だ。はたけさんじゃないですか・・・。」

ホッとして笑みを浮かべるうみのイルカに、カカシは手を上げて答える。

「『何だ』って・・・失礼な人だなぁ。」

「あ、いや、失礼しました!苦手な人だったらどうしようと思ってたもので・・・。」

「ふーん。うみのさん営業に苦手な人いるんだ。」

途端慌てて言い繕おうとするイルカに、心の中で噴出した。

―相変わらず扱い易い人だ。

 

 

 

 

 

カカシはうみのイルカに興味を持っていた。

今年からカカシの部下になったナルト、そのナルトが学生時代お世話になった先輩がイルカ。

ナルトを挟んで数度酒を酌み交わしたことがある。

自分とは正反対の人間。それがまた興味をそそった。

感情豊かで顔に出やすく扱い易い。お人好しで生真面目で優しくて。

ナルトの上司というだけでよく知らないカカシに、まるで子供の様な満面の笑顔を向ける気さくなイルカ。

こちらが重く感じない程度に気を配るイルカ。

イルカの居る空間は心地良く、好感を持てた。

万人に好かれそうな人間性だと思った。

同じ会社の人間でなければ口説くのに、と思ったこともある相手だ。

 

カカシは恋愛対象に男も女も関係無い人間だ。

自分が好感を持てる相手が恋愛対象。

実際男と付き合ったことは無いが、男に告白されても嫌悪感は持たなかった。

そんなカカシだが、社内の人間には手を出さないと決めていた。

社内恋愛なんて煩わしいから。

別れた元恋人と気まずい空気で働いてる同僚を見ているから。

そんな面倒事はゴメンだと思っていた。

 

 

 

 

 

「あぁーやっぱり・・・。」

イルカは携帯を手に、肩を落とした。

「・・・どうしたの?」

「振られちゃいました・・・。」

机に顔を埋めるイルカに、何と声を掛けるべきか当惑していると、

「ほら、見て下さいよ!このメール!」

携帯の画面をずいっと近付けられた。

そこには酷くヒステリックな文面が延延並んでいた。

「う、わぁ。こりゃキツイですね・・・。ご愁傷様です・・・。」

「ねぇ・・・。ヤバイかなーとは思ってたんですけど。やっぱりかぁ・・・。」

イブについてないなぁ、と鼻を擦り、弱弱しく笑みを浮かべるイルカが心底気の毒になった。

「・・・長い付き合いだったんですか?」

「数ヶ月前に付き合い始めたばかりなんですよ。イブは一日一緒に過ごしてくれって言われて・・・。」

可愛い子だったんですよー。我が儘多かったけど、若い子だったんでそういうもんかな、それも可愛いかなって。

―ほんとお人好し。

優しい表情でそう続けるイルカを見てカカシは思った。

そんなガキに振り回されて、結局自分が傷ついても相手を悪く言わない。

イルカの隣にはもっと大人な人間が似合う。大人のくせに子供の様なイルカを包み込める人。

年下の我が儘な女なんて似合わない。

「事情も考えずにこんなメール送って来る女、別れて正解ですって。携帯無くして連絡取れなかったんでしょ?」

こくんと小さく頷くイルカを見て更に続けた。

「折角のクリスマスイブにお気の毒だけど・・・元気出して。自棄酒でも行きますか?付き合いますよ?」

「・・・はたけさん、この後予定無いんですか?」

「はは。悲しい独り身ですからねぇ。イブも休日出勤だし、後は一人淋しく晩酌ですよ。」

そう言うと、イルカの顔にハッキリ「可哀想」という同情の念が浮かんだ。

―ど、同情されてる。なんか複雑・・・。

 

 

 

 

 

帰り支度をして、共に会社を後にする。

イルカは今夜の為に、友人の店で食事の予約をしていた。

当日にキャンセルなんて悪いから、とその店に付き合ってもらえないかと遠慮がちに言って来た。

律儀だな、と思う。それがまた好ましい。

クリスマスイブに男との食事に付き合わせるのが悪いと思ったのか、カカシは道道えらく気を遣われた。

 

イルカに案内された店は小奇麗なビストロ。

小さな店で、イルカの友人とシェフの二人で切り盛りしていた。

出迎えた友人に笑顔を向けるイルカ。

今日の出来事を話したのだろう。友人は肩を軽く叩き、イルカを慰めていた。

カカシにも人の好さそうな笑顔を向け、席へと案内する。

「良い雰囲気のお店ですね。」

そう言うと、イルカは自分が褒められたかの様に、嬉しそうに笑った。

 

食事が運ばれる度、カカシの前で親しげに話す二人。

「すみませんね、はたけさん。イブにコイツと二人で食事なんて。コイツ肝心なトコ抜けてて・・・。」

そう言って友人はイルカの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「抜けてるって何だよ!」

頬を染めながらも、嬉しそうにじゃれるイルカを見て微笑ましく思った。

そして―。

唐突に目の前の男が欲しくなった。

この笑顔を自分だけに向けて欲しいと思った。

この人が欲しい。

この笑顔を自分だけの物にしたい。

世の中には会社なんて腐る程ある。

でもうみのイルカは目の前のただ一人。

いざとなれば転職先を探せばいい。

―絶対に落としてやる。

目の前で親しげに友人と話すイルカを見て、カカシは強くそう思った。

 

聖なる夜に胸に落ちたこの想い。

これからを考えるとワクワクして楽しくて、カカシは自然と笑みが浮かんだ。

―逃がさないから。覚悟して。

そんな物騒なことを思われているとも露知らず、イルカは相変わらず魅力的な笑顔を浮かべ続ける。

さぁ、この真面目で固そうな相手をどうやって口説き落とそうか。

 

 

 

 

 

 おわり

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拍手ありがとうございました〜vvv

またリーマンかい!という感じですがクリスマスもパラレルで♪
メリクリ〜(^-^)
最後までご覧頂き、ありがとうございました!

'06/12/24 葉月

 

 

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