'08/5/26

 

 

 

 

 

「気持ち良い?」

イルカは薄っすら目を開けて小さく頷いた。

気持ち良さそうにふぅっと息を吐き出して、もう一度目を閉じる。

「もっと奥・・・。」

「はいはい。この辺?」

「ん、そこ・・・もっと。」

カカシが動く度、イルカは気持ち良さそうに吐息を漏らす。

「いっ・・・!」

奥を掠めた時にイルカが眉を顰めて声を上げた。

「あ!ごめん!痛かった?」

「・・・ちょっとだけ。大丈夫ですから続けて下さい。」

「こっちはもういいよ。次反対ね。」

カカシは膝の上のイルカの頭を回転させて、反対の耳を上に向けた。

 

 

 

 

 

5月26日。

今日はイルカの誕生日である。

カカシは任務が入っていて、帰宅はイルカより遅くなり、食事すら一緒に出来なかった。

プレゼントを買う暇も無くて、手ぶらでの帰宅。

大切な恋人の誕生日だというのに、何もしないのは寂しい。

だから、せめて今自分が出来ることを、とせっせとイルカにサービス中なのだ。

一緒に風呂に入って背中を流し、風呂上りにはマッサージをしてやり、最後の仕上げに耳掃除。

誕生日が嬉しい歳じゃないから、とか、カカシ先生だって疲れてるのに、とかイルカは遠慮したけれど、

「オレがしたいんだからいいじゃない。ね?」

と、少し強引にイルカを引っ張った。

「イルカ先生、気持ち良い?」

「極楽です〜。あ、そこそこ!」

カカシに耳を預けて弾んだ声でイルカが言った。

イルカの様子に自然と頬が緩む。

「イルカ先生、何か欲しい物無い?」

「もう!さっきから何回も言ってるじゃないですか。」

イルカが呆れたように笑う。

マッサージと耳掃除の間、何度もされた会話をまた繰り返した。

「一年に一回の誕生日なんだから、何かプレゼントさせてよ。」

「だって本当に欲しい物無いんですもん。カカシ先生が居てくれて、こんなにしてくれるだけで嬉しいです。」

妙に照れ臭くなって、必要以上にイルカの耳を穿ってしまった。

「痛い痛い!カカシ先生力入れ過ぎ!」

「ご、ごめん。じゃぁさ、オレに何かして欲しいことは無い?」

「今してもらってます。」

カカシはこっそり溜息を吐いた。

イルカが喜ぶことをしてあげたいのに、特別な日だから何かプレゼントしたいのに、この恋人は何も望まないから困る。

黙って何か買ってくればいいのだけれど、折角だからイルカが本当に欲しい物を贈りたいのに。

「はい、おしまい!もういいよ。」

肩を叩くと、イルカはゆっくり目を開いて、ゆっくり体を起こした。

鼻先が触れ合う距離で止まって、そのままカカシの目を見詰める。

じっと長い時間見詰められて、心臓が馬鹿みたいに騒ぎ始める。

「カカシ先生・・・。」

「な、何!?」

「カカシ先生にして欲しいこと・・・もっと気持ち良いこと、して欲しいです。」

頬を薄っすら染めながら、イルカが優しくキスをする。

「オレ、本っ当の本当に欲しい物は無いんです。カカシ先生がこうして祝ってくれて、優しくしてくれるだけで嬉しいんです。」

カカシ先生が傍に居てくれるだけで凄く幸せな誕生日です。

そう言って微笑むイルカの腰を引き寄せて、カカシは自分の膝の上に跨らせた。

力を込めて抱き締めて、何度も何度も口付ける。

「分かった。いっぱい気持ち良いことしてあげる。お誕生日おめでとう、イルカ先生。」

「ありがとうございます。ほんっっとに欲しい物は無いですからね。オレが欲しいのはカカシ先生だけですから!」

寝室へ移動する間もしつこいくらいに「欲しい物は無い」と念押しされたから、イルカの好きな物をご馳走することで妥協した。

 

 

 

 

 

数時間後。

夜中にトイレに起きたイルカは、一人部屋でボーっとしていた。

「あれだけ言ったら大丈夫かな・・・。正直、これ以上妙な物増えたら困るんだよなぁ・・・。」

イルカは溜息を吐いて視線を部屋の隅へと運んだ。

そこには今まで○○記念だの○○デーだの、イベントの度にカカシから贈られた物達が所狭しと並べられている。

気持ちは嬉しいのだけれど、カカシの選ぶプレゼントは妙な物が多くて、使えない物ばかりで困る。

それなら自分の欲しい物を言えばいいだけの話だが、イルカは本当に物欲が無いからそれも出来ずにいるのだ。

イルカはもう一度贈り物の山を見て、苦笑しながら愛しい恋人の傍へ戻った。

 

 

 

 

 

 おわり

 

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イルカ先生お誕生日おめでとーーー(≧▽≦)
一日遅れちゃった・・・。
カカシ先生が選ぶプレゼントは妙な物ばっかだと楽しい(笑)。
拍手ありがとうございました〜!

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08/5/27 葉月

 

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