'07/3/14 PM8:00
帰宅してネクタイを緩めて、一息ついているとチャイムが鳴った。
きっとイルカだ。
心弾んで玄関へ走ると、真一文字に口を結び、目を伏せたイルカが立っていた。
「いらっしゃい!」
手を引いて扉の中に招き入れ、抱き締めようとするとイルカが口を開いた。
「・・・い、言われた通りちゃんと来たんだからバカなことするなよ!もう帰るからっ!」
顔も上げないまま勢い良く言われてカカシは焦って引き止める。
「待ってよ!ちょっとくらい上がってってよ!」
回れ右するイルカの腕を慌てて掴んだら、思った以上に力が入ってしまった。
「いっ・・・!」
声を上げた弾みに顔を上げたイルカと目が合う。
「帰らないでよ・・・お願い。」
じっと見つめて言うと、イルカは手に持ったカバンで顔を隠した。
目の前にいるのに大きな壁が出来てしまった。
カカシは無理矢理抱き締めてしまおうかと思ったけど、バレンタインの失敗を思うと動けなくて。
イルカが動くのを静かに待った。
「・・・そんな顔・・・ずるい。」
壁の向こうから小さな声が届いた。
「え?」
聞き取れなくて反射的に聞き返すと、怒ったようにイルカが言った。
「だからっ!そんな顔で・・・そんな声でお願いされたら・・・断れないだろ!」
アンタ自分がめちゃくちゃ男前なの分かってやってんだろ!そう怒鳴るイルカの指先が赤い。
壁で顔は見えないけど、多分もっと赤いんだろう。
―あぁ、そっか。恥ずかしいのか。
そう気付いてホッとした。
カカシを意識して目を合わせられなくて、恥ずかしくて怒った風な口をきいているんだ。
「嬉しい。やっと意識してくれるようになったんだ?」
壁ごと抱き締めて囁いた。
「ずっと無反応だったから好みじゃないのかって心配してたんだよ。」
「・・・・・・ナルシスト・・・。」
呆れた口調で呟くイルカに苦笑を浮かべる。
―まったく・・・可愛くないんだから。
「ほら、こうしてたら顔見えないからいいでしょ。カバン下ろしてよ。」
イルカの肩に顔を乗せて、ぎゅっと抱き締めた。
視界に入るのは扉だけ。イルカの顔が見えないけど、拒否されないことが嬉しかった。
少しの間じっと抱き締めていると、イルカもカカシの肩に顔を乗せて、おずおずとカカシの背に腕を回した。
そのまま玄関先で抱き合う。
聞こえるのは互いの鼓動と呼吸の音。
それから、扉の向こうからは人の動く音が。
「ねぇ。少しだけでもいいから・・・。上がってくれるよね?」
息と一緒に耳に入れると、イルカは肩を竦めながら小さく頷いた。
嬉しくなって、すぐ傍にあるイルカの赤い耳朶を啄ばむ。
「ありがと。」
イルカが何も言わないのをいいことに、耳やら首筋やらにたくさんキスを落とした。
このまま唇にもキスしたい。
そう思って体を離そうとしたら、その前にイルカに押し退けられた。
その拍子にカバンが体の間を滑り落ちて、音を立てて床に転がった。
「調子に乗んなよっ!勝手に触んなっ!」
真っ赤な顔でイルカが怒鳴るから、指先で唇を押さえて言った。
「しっ!そんな大きな声出したら外に聞こえちゃうよ?お隣さん、帰って来たみたいだね。」
どうやら隣人は客連れで戻ったらしい。
壁の向こうから数人の話し声が聞こえる。
「まだ鍵締めてないのに。大きな声向こうまで聞こえて、何事かって入って来られたら困るでしょ?」
そう言うとイルカは真っ赤な顔のまま悔しそうに押し黙った。
コツンと額と額を合わせて、鼻先を摺り寄せる。
「アンタは・・・本当にずるい・・・。」
「ごめんね・・・。アナタのことが本当に好きだから。許して?」
キスさせて。
笑って囁くとイルカはゆっくり目を閉じた。
小さく睫を震わせて唇を薄く開いて。唇の隙間からは白い歯がちらりと見える。
少し緊張したイルカの表情。
カカシからのキスを待つイルカ。
目の前にイルカの唇がある、と思うと急にドキドキした。
たかがキス。唇を合わせるだけ。
イルカとはもう二回もしたのに。
顔に熱が集まってくるのが自分でも分かる。心臓はバクバクいってる。
ぐずぐずしていると、イルカが焦れて薄く目を開いた。
「あの・・・?」
「ご、ごめん・・・!何か緊張しちゃって・・・。」
真っ赤になっているであろう顔を慌てて両手で覆った。
カッコ悪い。
矢鱈と恥ずかしくなった。
そのまま熱が引くのを待ってじっとしていると、イルカが派手に噴出した。
「ぶはっ!アンタ自分から迫っといて!ははっ!」
腹を抱えてゲラゲラ笑われた。
カカシの顔の熱は引くどころか益益上昇して。
居た堪れなくなって、カカシはイルカから体を離した。
イルカと向かい合って、壁に背を預ける。
指の間からチラリと見ると、イルカは背を丸めてまだ声を殺して笑っていた。
「そんなに笑わなくたって・・・。」
「だって・・・ぷぷ!」
一頻り笑い終えて顔を上げたイルカと目が合った。
目尻に涙を溜めて、眉を八の字に曲げて、心底楽しそうな笑顔をカカシに向ける。
その笑顔に釣られて、カカシもイルカに微笑み掛けた。
カッコ悪い姿を晒してしまって恥ずかしかったけど、イルカがこんなに楽しそうに笑うなら悪くない。
「・・・アンタずるくて強引なわりにはヘタレっていうか・・・何か可愛いですよね。」
まだ少し笑いを含んだ声でイルカが言う。
それから、一歩踏み出してカカシに向かって手を伸ばした。
「オレがしてあげるから。目閉じて。」
カカシは赤くなりながらも、素直に目を閉じてイルカを待った。
緩んだネクタイを軽く引っ張られてイルカの方へ引かれて。
唇に軽いキスをされた。
直ぐに離れる気配がしたので、目を閉じたまま「もう一回」と強請ると、イルカから小さな笑い声が漏れた。
「仕方ないですねぇ。」
カカシが何度も「もう一回」と強請るから、イルカは優しいキスを何度も唇に落とした。
舌を絡ませ始めたのはどちらからだったのか。
気付けば抱き合って深いキスを繰り返していた。
舌を絡ませて、互いの唾液を交換して、息苦しくなるくらいのキス。
「は・・・んっ!」
イルカが鼻から抜けるような甘ったるい声を出した。
カカシはそれを切っ掛けに体を離した。
「ごめん・・・あんまり気持ち良いから夢中になっちゃった。ありがとね。」
最後に目の際に音を立てて口付けた。
「部屋に戻ろう?」
イルカの手を引いて移動しようとしたけど、イルカは動かなかった。
「・・・どうしたの?」
俯いてじっと動かないでいる。
心配になって下から覗き込むと、イルカは頬を赤く染めて目を閉じていた。
「・・・直ぐ行きますから。先戻ってて・・・。」
恥ずかしそうなその表情を見てピンときた。
そういえば、少し前かがみで腰を庇って立っている。
ズボンの上からでも少し膨らんでいるのが分かる。
「あぁ、大きくなっちゃった?」
「少し待てば治まりますからっ!アンタだって男なんだから分かるだろ!」
イルカは唇を噛み締めて声を荒げた。
カカシに気付かれたことが恥ずかしいんだろう。
床を睨んでじっと動かない。
熱を鎮めようと、荒い呼吸を整えようと、必死だ。
「出しちゃった方が楽だよ。」
そう言ってカカシはイルカの股間に手を伸ばした。
布の上から緩く揉む。
「何する・・・!やめろってば!くっ・・・ん!」
カカシの手首を掴んで止めようとしても、思うように力が入らなくてされるがままだった。
目の前に立ったカカシに縋って体を震わせる。
布の上から擦られるだけで、それだけで感じてしまって。
直接刺激が欲しくて、イルカは自分でベルトを緩めた。
透かさずカカシは下着の中に手を滑り込ませて、下着ごとズボンを足首まで下ろした。
イルカの性器がむき出しになる。
それはもう大きく育ちきっていた。
「ね?このまま出してあげるから。」
耳元で囁いて、性器を上下にきつく扱いた。
「あっ!ん、待って!電気!電気消して・・・恥ずかしい・・・!」
カカシは腕を伸ばして廊下の電気のスイッチを切った。
奥の部屋から少し漏れる光だけで、イルカの顔は薄っすらとしか見えない。
「ほら、これで良い?」
イルカの先端を指の腹で弄りながら問う。
「や・・・見んなっ!」
「・・・もう!我が儘だねぇ。」
そんなイルカも可愛いと思う。
カカシは頬にキスをして、イルカの肩に顔を乗せた。
「これで見えないよ。」
抱き合ってイルカの性器を扱いてやった。
イルカはカカシの背中に腕を回し、必死でしがみ付く。
いやらしく漏れる声を、カカシの肩に口を当てて抑える。
「んんっ!は、あっ!」
時時くぐもった喘ぎ声がカカシの耳に届く。
薄暗い廊下の端でイルカにこんないやらしいことをして。
自分がイルカをこんな風にしている、そう思うと酷く興奮した。
「もうイきそう?」
イルカのそれはぐちゃぐちゃに濡れて、今にも弾けそうにドクドクと脈を打つ。
カカシの横でイルカが小さく首を振った。
「いいよ。イっちゃって。」
動きを速めるとイルカは声を上げてカカシの手を止めた。
「あ!ちょっと、待って・・・待って!」
荒い呼吸の合間に、焦った声を発しながらカカシの手を制した。
「な、何?どうしたの?」
あと数回で絶頂を迎えられたはずなのに、予想もしないイルカの行動に驚いた。
こんなところで止めたら苦しいだろうに。同じ男だから分かる。
「イったら・・・汚れる・・・。」
「え?」
「アンタの服、壁とか・・・床も、汚れる・・・。」
そう苦しそうに小さく吐き出す。カカシの上に重ねられた手は小刻みに震えていた。
イルカの下半身はむき出しで、このまま精液を吐き出したらカカシに向かって飛び散るから。
カカシを汚してしまうから。
それに気付いてイく寸前にカカシを止めたのだ。
「・・・よくこの状態で我慢出来るね。ある意味尊敬・・・。」
あと少しで楽になれるのに。
それはイきたがってフルフルと震えているのに。
何度カカシが良いんだと言っても、イルカは首を縦には振らなかった。
「強情だねぇ・・・分かった。じゃぁオレが受け止めてあげるから。」
膝立ちになって、手早くイルカを口に咥えた。
「え・・・?う、そ。そんな・・・や、待っ!」
イルカがカカシの行為に気付いて制する前に、口と手で強く扱き上げた。
解放の瞬間を待ってギチギチに張り詰めたそれは、イルカの意思に反してあっさりと全てを吐き出した。
カカシの口内にイルカの精液が流れ込む。
それは温かくて少し苦くて。
カカシは戸惑うことなくそれを飲み下した。
ゴクリとカカシの喉が立てた音を聞いて、イルカは泣きそうな声になった。
「待って、って言ったのに・・・飲み込むなんて・・・。」
不味かったでしょ?と言って謝るイルカを抱き締めた。
まだ荒い息を吐くイルカの背を擦ってやる。
「美味しいものじゃないけど・・・アナタのだから平気。気持ち良かった?」
イルカは素直に頷いた。暗くて顔はよく見えないけれど、きっと頬を赤く染めているだろう。
イルカが遠慮がちにカカシの股間に手を伸ばした。
カカシのそれも緩く膨らんで布を押し上げている。
「・・・寝室、どこ?」
カカシの手を強引に引いて、イルカは寝室へと足を進めた。
戸惑うカカシをベッドに押し倒して服を全て剥ぎ取って。
「オレだってアンタを好きなんだから。オレだってアンタを気持ち良くしたい。」
最後までするつもりなんて些かも無かったのに、勢いに押されてイルカを抱いた。
最中痛みで涙を浮かべるイルカが気の毒になって、何度も止めようとしたけれど、
「オレが良いって言ってるんだから!オレだってちゃんとアンタが好きなんだから!」
イルカがそう言って許さないから、カカシはイルカを抱いた。
おわり
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途中までで放置してずっと忘れてた・・・(^-^;
オマケの微エロってことでv
最後までご覧頂きありがとうございました!
'07/7/9 葉月